ドイツの「黒い森」と呼ばれるシュヴァルツヴァルト・シベリアからアラスカに広がるタイガ=針葉樹林帯。
昨年渡って来たイスカ達は、まもなくそんな風景の中に帰って行く。
その森を構成する樹木は、カラマツ、トウヒ、マツやモミ。
この冬は初めてドイツトウヒで、出会うことができた。
彼らは、こんな風景で夏を過ごすのだろうか? 
 イスカ(交喙 Common Crossbill)

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 ドイツトウヒの葉の寿命は長く、それは夏の日照時間が短いことに対する適応からだそう。
球果は世界のトウヒ属の中でもっとも大きく、長さ10~20cm、径3~4cmで、ヨーロッパの柱時計の錘のモデル。
イスカは体長が16.5cmもあるのに、カラマツについたイスカは大きく見えドイツトウヒでは小さく見える。
 
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 イスカがやってくる時は、いくつかのパターンが有る。
単独できて天辺に止まって、地鳴きしては仲間を探す。
雌雄か家族?で近くのカラマツにきて食事をし、休憩に樹幹にはいる。
10数羽で、ジュンジュンと鳴きながらカラマツにきてから、一羽が天辺に止まり次々に中に隠れる。
あるいは、遠くで声が聞こえたと思いしばらくすると、鳴かずにスッと入って隠れてしまう。
 その時によってはまったく見つけられぬまま、さよならというときもあった。

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 集団で来たときに探すのは比較的楽だが、そうは言っても球果の裏や球果の向こうだとなかなか見つけられない。
上の写真には雌が一羽とオスが二羽、下はわかりやすく雄が二羽。

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 ドイツトウヒは現在確認されている樹木の中で最高の、約9,550年の樹齢(根での樹齢)のものがあるそうだ。
日本には明治中期に導入され、宮沢賢治が在学した盛岡高等農林学校にも本館周辺に植えられていたそうだ。

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 『わがうるはしき  ドイツたうひよ  (かゞやきの  そらに鳴る風なれにもきたれ) 』
牧師の聖書講読に通い、娘さんからオルガンを習った宮沢賢治、その恋情を歌ったという説も。

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 そんなことを思えば浮かぶ歌。
 『不来方のお城の草に寝ころびて  空に吸はれし   十五のこころ 』 啄木の処女歌集『一握の砂』(東雲堂書店 1910年版)
不来方城=現盛岡城址公園にも、ドイツトウヒがあったように記憶している。

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 ヨーロッパでは、イギリスの五月祭に五月柱(Maypole)、ドイツでは五月樹マイバウム( Maibaum)として聖木に使われるドイツトウヒ。
そんなドイツトウヒに寄り添うイスカが、キリストを助けようとした伝説に結びついたのかもしれない。
 高原の残雪の農耕地からそよぐ風は心地よく、除雪され小山になった硬い雪をイス代わりにして飛来を待つ間、思いはあちらこちらに飛ぶ。
まったく声も無く飛来した一〇数羽が、枝にでてきた。 
 
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 雌がでてきてくれた。

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 北側から暗い樹幹部の枝に移り・・・。

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 雄のいる明るい房で採餌を始めた。
ペアなのだろうか。
しばらく一緒に食べていた。
はじめの頃はそれほど無かった食痕が、だいぶ目立ってきた。

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by photo-etudes-eiji | 2018-03-28 23:24 | 野鳥 | Comments(0)

 ドイツトウヒは、宮沢賢治の詩の中にも出てくると教えてもらった。
『春と修羅』の中の「丘陵地を過ぎる」という詩だと、『賢治鳥類学 新曜社』を書かれたイーハトーブ・ガーデンのnenemu8921さん。
青森下北地方ではイスカが営巣・繁殖したと、最近の研究で明らかにされている。
磔になったキリストの打たれた釘を抜こうとして嘴が曲がってしまったイスカを、宮沢賢治は知っていただろうか?
知っていたとしたら、どんな物語が紡がれたか?
そんなことを考えるのも、また楽しい。
 ドイツトウヒのイスカを、この冬観察してきた。
カラマツの天辺に雌雄のイスカが止まって、求愛給餌のような仕草を見せてくれたこともあった。
 イスカ(交喙 Common Crossbill)

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 いろいろなことを考え合わせると、どうやら営巣などとはまったく関係の無い採餌ポイントの一つにすぎないようだった。
それも、一日に一度二度・・・。
 イスカ ♀(交喙 Common Crossbill)

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 その上、ドイツトウヒの結実は4年に一度だと森林技術協会の方に教えていただいた。
いろいろな鳥が訪れ食べていけば、来年はないということか。

                       
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 陽のあたった側に出てきてくれると、イスカ雌のオリーブ気味の黄色はよく目立つ。


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 嘴を差し込み、舌をうまく使って中の種子を取り出す。

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 イスカ♂が実につくと、日陰側や房の中では保護色のようになって見落としてしまうほど。
 イスカ ♂(交喙 Common Crossbill)

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 嘴を差し込んで開くと、松毬も開かれる。

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 舌を使って引っ張り出して・・・。
高い梢・カーテンのように囲ってくれるトウヒの枝。
時として、イスカは一時間近く採餌してくれたこともあった。

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 いろいろな姿勢でジックリと採餌を見せてもらった。

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 三月、湾岸でももう桜が満開に近づいた。
ドイツトウヒのイスカ画像も、ひとまとめにして見直す時期になったようだ。

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by photo-etudes-eiji | 2018-03-26 23:08 | 野鳥 | Comments(0)


 アルザス=ロレーヌの国境にあるドナウ川の水源「シュヴァルツヴァルト=黒い森」は、密集して生えるトウヒの木によって暗く、黒く見えることがその由来だという。
ヨーロッパトウヒ・ドイツトウヒは、常緑針葉高木で20~30mになるが、原産地では高さ40m・直径80cmにもなり、中には70mに及ぶものもあるという。
そのトウヒの実をイスカやナキイスカがかじり種子を食べている動画を見たのは、イスカの生態を検索していてUCバークレイかUCLAのライブラリーでだったと思う。
 
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 アルザス=ロレーヌ ・「シュヴァルツヴァルト」なんて目にすれば、子供の頃読んだ「最後の授業」や「アルト・ハイデルベルグ」が浮かび、なおさらそこに住むであろう夏のイスカが想像された。
 そんなドイツトウヒでイスカを撮りたいものだと思って、いくつかの場所をあたったりもした。
痕跡や飛来を確認できても、からむ機会は振られっぱなしだった。
そんな僕に、野鳥の会の先輩が「こんなのが撮れました」とメール。
涎を垂らしながら、行くしかないでしょう!
 一〇羽ほどの群れが、ジュンジュンと鳴きながらカラマツの天辺にやってきた。
 イスカ(交喙 Common Crossbill)

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 近くには立派なドイツトウヒの大木が、枝に雪をのせて待っている。
そこへ来い、来てください・・・祈りながら待つと・・・!!!

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 来てくれた!
雪もある!
だけど、なにかがたりない。実が写らないじゃない(T_T)
慌てて構図を左に。
ウ~~ン、いかにもだなぁ~~(>_<)

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 なんとかしてくれないか!と胸の中で叫んでも・・・。
やっとこの程度。

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 そのうち、集団は消え雌のイスカが一羽。
そこですか!!!

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 しばらくすると、この雌のイスカも消え・・・・・・・。
待てど暮らせど集団は姿が見えず、零下の車中泊を決意する羽目に。
 翌日は、朝から待っても声も聞こえず・・・・。
儚い夢かという思いが浮かんだ頃!
カラマツに雌のイスカが来た!

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 やがて、彼女はドイツトウヒの枝の中に!
そうか!
ドイツトウヒはこんなにたわわに葉を茂らせ、しかもカーテンのように樹幹も枝も隠している。
出てきてくれないことには、撮れないのか!と、今更ながらに気づく。
 と!
成鳥雄のイスカが独特のマツボックリに!
きたっ~~~!

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 うん?右の奥で動く気配がする。
黄色が見えた。
雌が近くにいる!
 雄は松毬の実を食べ始めた。
するとその上からのぞき込むものが!

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 雌のイスカだ!(*^_^*)
求愛給餌もありうるか!

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 ♂のイスカが出てきてくれただけでも、とてもうれしく小躍りしたいくらいなのに!!
雌も一緒のマツボックリにのってくれた!
うれしくて体が震えた。(寒さのせいもあるけれど) 

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 雄がこちらに気づいた。
その瞬間に、カーテンの中に隠れてしまった。
・・・・・しばらくして、雌が中段の枝の先端に出てきてくれて、おしまいだった。
 イスカはヨーロッパ・アジアの北部や北アメリカで夏を過ごす冬鳥。
ほんの一部が日本の山地で留鳥として繁殖している。
ドイツトウヒは、冬に飛来するイスカの夏の風景を想わせてくれる。
撮りたかったドイツトウヒのイスカ。
うれしかったなぁ!ありがとうだね!

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by photo-etudes-eiji | 2018-02-22 06:00 | 野鳥 | Comments(2)

雪の中のイスカ

 イスカは、感動と不思議に包まれる興味深い野鳥だ。
そんな不思議なイスカに魅せられて、撮り続けてきた。
雑誌「BIRDER」2018-02号で、三上かつらさんという方が「アトリ界の変わり者、イスカの謎多き冬暮らし」という一文を載せていた。
三上さんの論文を読んだことがあるが、僕の問題意識に一定の回答を明らかにしてくれるかもしれない研究者がいることは、うれしいことだ。
イスカの謎が解き明かされて欲しい反面、謎を謎のまま不思議な感動に包まれていたい気持ちも少々あるのだが・・・。
 静かに舞っていた雪が、吹雪き出した。
それは、イスカ♀も顔を背けるほど。
カラマツの実に積もった雪も真横に吹き飛ばされる。
 イスカ(交喙 Common Crossbill)雌
                
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 イスカの体色は、誕生月や摂取食物の差でいろいろなバリエーションがある。
「黄色い雄」も存在するという。
ここで出会った群は、大陸からの越冬飛来個体群のようだ。
集団でジュンジュンと鳴きながら飛んできては、カラマツの実をついばむ。
 イスカ(交喙 Common Crossbill)雄

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 雪は時折吹雪き、やんではまた舞い出す。
零下の中で、食べ続けることは唯一生きていく手段だ。
だからだろうか、イスカは他の鳥に対して鷹揚に見える。

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 マヒワやベニヒワの群れが同じ木に飛来しても、追い立てることがないように思う。
テリトリー意識が低いのだろうか。
雪の降りしきる枝先に、ベニヒワと仲良くぶらさがった。

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 ベニヒワと並ぶと、その嘴の大きさが目につく。
カラマツの実は、全長14cmのベニヒワにはちょうど良い大きさに思え、全長17cmのイスカには小さすぎる感じ。

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 カラマツに、雌のレモンイエローの羽衣はよく目立つ。
 
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 カラマツには大きすぎるように感じる嘴を、器用に角度を付けてねじ込み・・・。

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 舌をうまく使って、種子を食べる。

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 積もった雪が、イスカの一突きで風に舞う。
ジックリと眺めていても、そのたびにシャッターを切ってしまう。 

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 イスカの雌も同じ枝にやってきた。
ペアなのだろうか?
カラマツのイスカはなかなか絵にしづらいが、こうした場面を眺めているのは心が穏やかになる。

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by photo-etudes-eiji | 2018-02-17 20:29 | 野鳥 | Comments(0)

義鳥-イスカ飛来

 義鳥-イスカが、房総のあっちとこっちにやってきた。
発見されたのは、台風がまだフィリピン海あたりにいた頃だったが、大陸ではシベリア西部からも低気圧がグンと育ち高気圧を日本に押し出していた。
それは東北から関東まで張り出していた。
イスカが数十羽とかの群れで、低地の房総にやって来たのは、2013年以来だろう。
 イスカ(交喙 英名 Common Crossbill)

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 西洋のキリスト教文化圏では、キリストが磔になったとき、その釘を抜こうとして嘴が曲がってしまった鳥。
それがイスカだ、という伝承が有るという。
調べてみたが、確かにルネサンス期のキリスト磔刑絵画に尾羽を広げた天使が描かれたものがあった。
それに、「創世記」には「イスカ」という名前も出てくる。
が、・・・伝承をあたろうにも、その学がない。
しかし、そんな伝承のある鳥ならじっくり観察したいと何年も観察してきた。
今年の巣立ち以来久しぶりに会ったイスカは、成鳥が中心の群で、今日は15羽ほどだった。
 イスカ ♂(交喙 英名 Common Crossbill)

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 松林のあちこちに隠れては、「ジュンジュン」とスズメの声を濁らした感じで鳴いては枯れ松に飛来した。
枯れ松ではなぁ~~と思いながら、それならこのシーンをと。
交差した嘴を松ぼっくりに突き刺す。


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 すると交差した嘴が自動的にドアを広げるように、マツカサが少し開く。

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 そこでグンと差し込むとマツカサはさらに開き、種子に舌が届く。

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 アクロバチックな姿も見せてくれた。

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 求愛給餌かと思わせる場面があって、緊張した。
雄のいるところに雌が飛んできて、すぐ側に止まった。
雄は取り出した種を雌に・・・・。

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 雌はそれをしっかり見た後・・・降下して、自分で餌をとりだした。
振られたのかな?と、チョット同情した。

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 「振ったのかい?」と聞いてみたが、何とも言葉がわからない(^^;)
 イスカ ♀(交喙 英名 Common Crossbill)

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 ここで越冬し、交尾から営巣~子育てとしてくれれば良いのだが・・・・。


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 盛んに食べまくっていたからなぁ!
「ドリトル先生」でもいれば、「下北半島や会津磐梯・日光・水上あたりで越冬するつもりが、ここまで来ちゃったのかい?」「この先どうするの?」と、聞けたのだけれど・・・・。
イスカの雌が微笑んだ。
 イスカ ♀(交喙 英名 Common Crossbill)


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by photo-etudes-eiji | 2017-10-31 06:00 | 野鳥 | Comments(0)