ナベヅルがやって来た!

 フィールドで野鳥の出を待っていると、背後の遠い空に黒い点が三っ。
アオサギにしては順光なのに黒いし体が太い気がするし、鵜にしては飛び方も体型も違う。
双眼鏡に入れて見ると、ツル!
胴体の羽衣の色が鍋についた煤のように見えることから、和名がついたといわれるナベヅルだった。
ナベヅル三羽はゆったりと、しかも、なんとなくユーモラスな格好でこちらに向かってくる。
 ナベヅル(鍋鶴 Hooded crane)

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 ナベヅルは800mほど先の田圃に降り立ったようだ。
500mほど歩き、畦の枯れ草の隙間から急いで証拠にワンカットを押さえた。
ナベヅルは絶滅危惧II類(環境省レッドリスト)。

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 距離をつめようとしたが、ナベヅルはしばらくして飛び立ってしまった。
しかし、こちらに飛んでくるではないか!

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 三羽は家族なのだろうか?
前後を成鳥がゆき、真ん中の個体は頭部から顔・頸と淡褐色だから幼鳥だ。

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 村の杉林を横切りひと羽ばたきごとに近づき、南西に向かうが・・・レンズからはみ出してしまった。

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 ナベヅルは、世界の推定生息数の九割が九州・鹿児島の出水市で越冬するという。
近年、その過度の集中が種の保存上からも問題になって、デコイを設置するなどして越冬地を分散させようとの試みも始まっている。

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 2014 年 11 月に出されたパブリックコメント資料を、一部抜粋してみた。
『ナベヅル、マナヅルの新越冬地形成等に関する基本的考え方   環境省自然環境局野生生物課 鳥獣保護業務室 』
『3 目標 第一段階として、集中化による絶滅リスクの回避が喫緊の課題であり、ナベヅルは、世界の個体の約9割が出水で集中して越冬していることから、まずはナベヅルに対して優先的に取り組み、国内の出水以外の複数地域で安定的に合計1,000羽以上(成鳥)越冬する(環境省レッドリストの絶滅危惧 種判定の一基準)ことを目標とする。マナヅルについては、出水での集中の割合は世界の個体の約5割とナベヅルより低いものの、世界の個体数は、ナベヅルよりも少ないことから、ナベヅルのように具体的な個体数の設定は行わないものの、出水以外での越冬個体数の増加を目指す。 最終的な目標としては、出水以外の国内複数箇所において、出水のよう な長期安定的な越冬地を形成するとともに、国内でのツル類の健全な個体群の維持を図ること、また、出水においても、餌場、ねぐらへの過度の集中を緩和し、できる限り給餌に頼らずに生息できる良好な越冬環境を形成・維持することを目標とする。 』

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 ナベヅルが戻ってこないか?と、 チラチラと西の空を見て北の空を見て・・・。
すると、北の空からハクチョウの群れが飛んできた。
 コハクチョウ(小白鳥 Tundra swan )

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 コハクチョウの群れのようだ。
「本埜のハクチョウの里」では、今期の飛来数が130羽を超えたとか。
コハクチョウ(小白鳥 Tundra swan )

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 この冬はもう一度コハクチョウのビルパターンを三種きっちりと撮りたいものだ。
(過去記事の2018-01-31 「コハクチョウのビルパターン」に詳しく)

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 そんなことを考えながら待っていると、ふたたび西北の空にナベヅルが戻ってきた。
先回りして先ほどの田圃近くにと思っていたら・・・東の空に飛んでいってしまった。
この冬、茨城・千葉とナベヅル飛来の話を聞く。
この家族は同じ家族なのかどうか解らないが、いずれにしても周辺に落ち着けばまた会う機会もできるだろう。
 ナベヅル(鍋鶴 Hooded crane)

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# by photo-etudes-eiji | 2018-12-05 06:00 | 野鳥 | Comments(0)

 湾岸の公園は、かつて反公害運動の高まりの中で首都高湾岸線から東関道を伸ばす際に緩衝緑地帯として作られた。
そこには、マテバシイなどの公害に強い常緑樹が植樹された。
今年も、そのマテバシイを幼虫が「食樹」とするムラサキツバメが気温が上がると舞っている。
 誰が植えたのか、最近人気の皇帝ダリア=木立ダリアが一輪の花をつけていた。
 皇帝ダリア・キダチダリア(木立ダリア)

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 ムラサキツバメは、ウラギンシジミやムラサキシジミとともに、ここで集団越冬している。
今年も数カ所で集団ねぐらができている。
が・・・、残念なことはいたるところ過剰に剪定・刈り込みされてチョウの卵や幼虫も排除され、野鳥が逃げ込む隙間もドンドン無くなってしまっていることだ。
 アオキに集団ねぐらができていた。
 ムラサキツバメ(紫燕)の集団ねぐら

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 ムラサキツバメの集団ねぐらに、一頭だけムラサキシジミが一緒に居た。
ムラサキシジミには尾状突起が無いから、すぐに区別がつく。
このアオキも、剪定されすぎてみすぼらしいこぢんまりとした株になってしまったが、気温が上がって集団ねぐらからムラサキシジミが降りてきて羽を広げてくれた。
 ムラサキシジミ ♂(紫小灰蝶 Japanese oakblue)

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 光が差し込むと青紫が輝きを増し美しい。
近くにはこれも切り詰められたサザンカの垣があり、花盛りなのだがなかなかうまく花とからんでくれない。
無理矢理、横から花をいれて撮った。
 ムラサキシジミ ♀(紫小灰蝶 Japanese oakblue)

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 ムラサキシジミも、光が差し込む一時間ほどの短い時間に羽を広げ椿やサザンカ・アオキなどで葉の表面のミネラルなどを補給するのだろうか?
 ムラサキシジミ ♀(紫小灰蝶 Japanese oakblue)

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 ムラサキツバメの♂がねぐらから降りて、リュウノヒゲの葉の上で開翅してくれた。
 ムラサキツバメ ♂(紫燕)

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 ムラサキシジミもムラサキツバメも、緩衝緑地帯の谷津干潟~テニスコート・秋津サッカー場・野球場から香澄~幕張と続く一帯に暮らしている。
一帯はすべて埋め立て地。
ムラサキツバメやムラサキシジミは、そこに植樹されたマテバシイによって運ばれここに来たのだろう。
ムラサキツバメは1990年代までは本州(近畿地方以西)、四国、九州に分布していると考えられていたのだから。
マテバシイの葉でムラサキツバメが羽を広げていた。
 ムラサキツバメ ♀(紫燕)

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 純白のサザンカに、ムラサキツバメがきて吸蜜してくれた。
こうしたときは羽を広げてはくれないのが残念だが、あちらこちらと舞っては移動して様々な花で撮らせてくれた。
しかし、翅裏だけでは雌雄の判定が僕には難しいのが難点。
 ムラサキツバメ (紫燕)

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 ムラサキシジミもムラサキツバメも、アリに守られる代わりにアリに分泌物を提供するという共生をおこなうことが知られている。
ただ最近の研究では、単なる共生ではなくムラサキシジミやムラサキツバメの幼虫の出す分泌物のなかにアリを従属させるような物質があり一方的に従属させているといった事も明らかになってきている。
 公園を散歩するときに、カメラを持っていくと・・・どうしても目が行ってしまい・・・これでは運動量が少なくなってしまうのが問題だ!
 ムラサキツバメ (紫燕)

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# by photo-etudes-eiji | 2018-12-03 06:00 | Comments(0)

落ち葉とミヤマホオジロ

 木枯らし一番が近畿には来ても、東京地方では1979年以来の39年ぶりに木枯らし無しの師走。
これでは冬鳥は関東に向かわず、近畿に行ってしまいそうだ(根拠があるわけではないけれど)。
それでも少数が来ているからと、ミヤマホオジロを探しに行った。
 ミヤマホオジロは警戒心が強い。
枯れ葉を踏むこちらの足音に敏感に反応して、草むらや樹間に隠れてしまう。
静かに歩いては、双眼鏡で先を探し・・・、いた!
そっと寄ったが、一歩近づきすぎた!!
地表からピョンとジャンプして細い枝にのってしまった。
 ミヤマホオジロ ♂(深山頬白 Yellow-throated bunting)


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 じっと動かず静かにしていると、やがて安心したのかふたたび降りて藪際に。

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 ちかくに雌がいるようだ。
 ♪チッ・・チッ♪と地鳴きしてから、黄葉の枯れ葉のなかに。
もう一羽が草藪で動いている。


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 さかんに草の実を食べ始めてくれた。

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 こちらの存在を一応確認しながらも、盛んに採餌してくれる。
雌も枯れ葉の中に出て来てくれた。
黄色と茶色の枯れ葉は、ミヤマホオジロには合いすぎるくらいにピッタリ。
雄の派手さに比べ、雌は動かずにじっとしていたら探すのに一苦労の保護色になっている。

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 ミヤマホオジロは広島県や長崎県対馬では繁殖例があるそうだが、ロシア南東部・中国・朝鮮半島から渡ってくる冬鳥。
昔は漂鳥のルリビタキのように、夏は高い山で=深山で暮らし冬は低地に降りてくると考えられていたのだろうか?

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 20分近く遊んでくれて、林の中に消えていった。
雪が降っても、また会えるだろうから8ヶ月ぶりの出会いに喜んで他を探しに移動した。 
 
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# by photo-etudes-eiji | 2018-12-01 06:00 | 野鳥 | Comments(0)

 イヌワシやクマタカの調査に少しだけ協力しているが・・・、飛ばないときなどはなかなか辛いものがある。
大陸型チュウヒ=通称ズグロチュウヒを待っている間、ミサゴが楽しませてくれた。
バトルというほどのことでもなかったが、2ショットが撮れた。
ミサゴにまちがいは無いのだが、問題はハイタカなのかオオタカなのかということ。
このポイントでは両種とも出るので、判定に困った。
尾羽が扇を半開したような丸尾に見えるからオオタカとしたいところだが・・・この一点では、丸尾のハイタカも居るというから僕には断定できない。
 ミサゴ(鶚・魚鷹 Osprey)

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 実際、この日はハイタカを撮っていた。
 ハイタカ(鷂 Sparrowhawk)

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 田圃には冬鳥のタゲリの群れが、二番穂に隠れるように採餌して時たま移動。
後頸や翼には緑や赤紫の金属光沢が出るのだが、今日は遠くから飛翔姿で終わりに。
 タゲリ(田鳧、田計里 Northern lapwing)

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 ミサゴは古い和語で、一説に水を探って魚を捕ることからついた名前で、「空飛ぶ漁師」などと呼ばれる。
日本では北海道で夏鳥のようだが、ほとんどの個体が留鳥として全国に分布。
獲物を見つけるとホバリングして狙いをつけ、脚を前に突き出した態勢で水に突っ込み、両足で大小さまざまな魚を捕らえる。
 ミサゴ(鶚・魚鷹 Osprey)

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 ミサゴの特徴は、猛禽類ではミサゴだけの足の外側にある魚を捕らえるための棘=反転する第1趾や、鼻孔の弁、密生し油分で耐水された羽毛で、足の指はうろこ状だという。
残念ながら、そこまで判別できる撮影距離ではなかった。

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 ミサゴは雌雄同色だが、メスは胸にある褐色の帯がオスよりも太く色が濃い。
この個体はどうなんだろうか?

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 ミサゴは河口部では潮が満ち始める時に狩りをすることが多く、潮の干満で魚が移動することを知っているからだという。
なかなかに賢い。

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 陽が沈み大陸型チュウヒは塒入り。
針葉樹のギザギザが、とてもイイ感じだ。

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 東の空には赤い月が昇ってきた。
11月だというのに、その暖かさは夕陽さえ揺るがせる。


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# by photo-etudes-eiji | 2018-11-30 06:00 | 野鳥 | Comments(0)

 チュウヒの越冬期は、カモ類やヨシ原の小型鳥類が増える水際に隣接した背丈の高い草地環境に暮らす。
周辺を大きく一回りして、田畑や草丈の伸びた農道・葦の育つ湿地や中州を見て回った。
 大陸型・ズグロチュウヒ(沢鵟 Eastern marsh harrier)

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 大陸型ズグロチュウヒは、その上空を悠々と飛ぶ。
こうした環境は、雌雄での体格差からの獲物の比率(雄は小型ほ乳類が目立ち、雌はカモ類が多い)の違いを両立させている。

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 二番穂の伸びた田をかすめるように飛び・・・。

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 ストンと緑の穂の中に降りた。
獲物を捕まえたのではなく、どうやら一休みのようだった。

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 チュウヒの朝の飛び立ち時刻は、日出20分前くらいからが多いらしく狩り場へと移動し、日没60~90分前になるとねぐら周辺を飛び回るという観察記録がある。
西の雲間に陽が入った頃、大陸型チュウヒが帰ってきた。

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 周辺を旋回して、葦からに突き出た枝に留まった。

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 飛び立っては旋回してまた枝先に留まりと、三度ほどしてくれた。
 
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 チュウヒの塒は、寝床には倒れたヨシの上を利用しヨシの葉や茎を薄く重ねて休むそうだ。

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 チュウヒの野生個体の最長生存記録は、15歳(NPO法人河北潟研修所 2013)という。
環境省レッドデータリストで「絶滅危惧1B類」のチュウヒ。
その越冬地の環境が、永く続くよう思いながらポイントを後にした。

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# by photo-etudes-eiji | 2018-11-28 18:00 | 野鳥 | Comments(0)