ワレモコウのゴマシジミ・・・驚きの生態

 知らなければなんということもない光景が、知ってみれば驚きの世界の入り口だったということは日常のそこここにあふれている。
其れに気付くか否かというだけのこと。
2年前、野鳥の会の先輩から「ゴマシジミがでたよ。」との知らせで、ゴイシシジミを撮ったからゴマシジミというのも見てみようと探鳥ついでに行ってみた。
出会ったゴマシジミは、「ゴイシシジミの方が白黒スッキリしていて・・・ゴマだから黒点が小さいのか・・・」という第一印象。
しかし、その生態を調べてみると驚嘆するものだった。
 今年も、ゴマシジミに出会えた。
 ゴマシジミ(胡麻小灰蝶 Scarce large blue)

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 ゴマシジミは絶滅危惧II類。
 『 ゴマシジミは、チョウ目シジミチョウ科に分類されるチョウです。
ワレモコウのつぼみだけに産卵し、孵化した幼虫はワレモコウの花を食べ脱皮を繰り返します。
秋口に4齢(3回脱皮)くらいで地上に降り、クシケアリによって巣に運ばれます。
クシケアリは、ゴマシジミの幼虫が出す蜜をなめ、ゴマシジミの幼虫はクシケアリの幼虫を食べて成長し、翌年の夏に羽化します。
 松本市教育委員会
 草むらの中のワレモコウに、ゴマシジミがいた。

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『 アリの巣は、ほかの昆虫にとってもパラダイスです。
なぜなら常に食物が運び込まれ、外敵から攻撃を受けたらアリが戦ってくれるからです。
アリにばれずに、巣の中にうまく侵入できれば、アリの恩恵を受けて暮らせます。
しかし、アリが築き上げた巣によそ者が簡単に侵入できるわけはありません。
そこでシジミチョウたちは、化学物質の力を使ってアリを欺くのです。
 アリは体の表面に種に固有のワックスのような化学物質を持っていて、これにより仲間を見分けています。
例えば「ゴマシジミ」というチョウの幼虫は、「シェンキクシケアリ」のワックスをまねて仲間と勘違いさせます。
さらに、お尻から甘い蜜を出してアリを引き寄せ、巣まで連れて帰ってもらい、成虫になるまでシェンキクシケアリの幼虫や蛹(さなぎ)を食べて育つという知能犯です。
しかしチョウたちは羽化すると、化学物質の効力が薄れるのかアリたちから一斉に攻撃を受けるため、大急ぎで巣から脱出しなければなりません。
進化の中で獲得したアリを欺く戦略も、期限付きなのです。』大阪教育大学教育学部 教養学科 自然研究講座 准教授 乾 陽子 先生
 
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 ワレモコウのつぼみだけに産卵し、孵化した幼虫はワレモコウの花を食べ脱皮を繰り返し、アリに運ばれ守られながらアリの幼虫を食べて成長し、羽化直後に脱出する!
なんという驚異的な生態だろうか!
アリとの関係性の深いシジミチョウにはムラサキシジミ・ヤマトシジミにキマダラルリツバメなどがいるが、それは共生ともいえそうな関係。
しかし、ゴマシジミは寄生だ。

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 ワレモコウ(吾亦紅)といえば歌謡曲で、ヒットした歌がある。
歌詞に理解困難なところはあるが、好きな歌だ。
そんなワレモコウとシジミチョウとなればいい絵になるかなという思いは、生態を知れば深い「業」のようなものを感じて身震いするほどだった。

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 近くにはキキョウが綺麗に咲いていた。
驚いたことにキキョウもまた、自生株は近年減少傾向にあり絶滅が危惧されている絶滅危惧II類だそう。
生物多様性センターによれば、100年後の絶滅確率は51%だそうだ。
 キキョウ(桔梗 balloon flower )

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 今期は猛暑もあってゴマシジミの発生は少し早く、ワレモコウの開花は始まったばかりだった。

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 近くには 年4-5回発生するツバメシジミもとんでいたが、尾状突起がなくなっている個体だった。
 ツバメシジミ (燕小灰蝶 short-tailed blue)

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 まだ開花の少ないワレモコウだったおかげか、探し歩く手間もいらずゴマシジミはやってくる

 
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 完全な開翅は撮れなかったが、半分見られただけで十分満足だった。

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 そのうえに、交尾個体まで撮ることができた。

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 交尾後、雌はワレモコウに産卵する。
そうしてシワクシケアリに出会わなければ成蝶にはなれない。
1頭のゴマシジミの幼虫は、200個体以上のシワクシケアリの幼虫を食べるそうだ。
食べ尽くせば、自らも種を維持できないゴマシジミ!

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 草むらの中に赤紫のボンボンのような花をつけるワレモコウ。
そこに、奇蹟を重ねなければ生きてはいけない新しい命が生まれようとしていた。

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by photo-etudes-eiji | 2018-08-10 22:19 | | Comments(0)